社会保険労務士・山口労務経営管理事務所|東京中央区銀座 > ブログ

期間の定めのある契約(有期雇用契約)について

2012年1月31日 火曜日

 雇用契約には「期間の定めのある契約」と「期間の定めのない契約」の2種があります。一般に契約社員と呼ばれる「パートタイマー」、「アルバイト」等の方々を「期間の定めのある契約=有期契約労働者」といい、その労働契約を「有期労働契約」と呼びます。

 最近はこういった形態での雇用契約が増加しており、それにともない有期契約労働者との間でのトラブルが多くなっています。


【有期雇用契約締結時の注意点】


1.必ず書面で契約書を交わす。


2.更新をするかどうかを明確にする。

*具体例

 ①自動的に更新する

 ②更新する場合があり得る

 ③契約の更新はしない


3.更新する際の判断基準を明確にする。

*具体例

 ①契約期間満了時の業務量によって判断する

 ②その人の勤務成績や態度により判断する

 ③その人の業務の遂行する能力により判断する

 ④会社の経営状況により判断する

 ⑤従事している業務の進捗状況により判断する


4.就業規則等(たとえばパートタイマー就業規則などその人が該当する規則)を明示する。


【有期雇用契約終了時の注意点】


1.有期雇用契約約については、やむをえない事由がない限り、その契約期間が満了するまでの間に、有期契約の労働者を解雇することは認められません(労働契約法第17条)。「やむを得ない事由」とは、「会社が倒産した」とか「天変地異で事業所の操業が不能になった」などです。「やむを得ない事由」かどうかは、使用者側に立証する責任があります。「やむを得ない事由」を招いた原因が使用者にあるときは、残った契約期間分の賃金相当額の損害賠償責任が発生する場合があります。


2.契約を更新しない場合(「雇止め」のこと)、次の①~③の有期労働契約者に対しては、少なくとも契約の期間が満了する30日前までに、その予告をする必要があります。

 ①有期労働契約が3回以上更新されている有期契約労働者に対して

 ②1年以下の契約期間の契約が更新、反復更新され、最初に契約を締結してから継続して通算1年を超える有期契約労働者に対して

 ③1年を超える契約期間の契約を締結している有期契約労働者に対して


3.上記「2.」の有期労働契約者に対して雇止めをする際、その理由を示す証明書を請求された場合は、契約期間が満了した、ということとは別の理由が必要です。

*具体例

 ①前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されたため

 ②契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約はその上限にかかわるものであるため

 ③担当していた業務が終了・中止したため

 ④業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため

 ⑤職務命令に対する違反行為を行ったため、無断欠勤をした等勤務不良のため


4.雇止めを行おうとする場合でも、対象となる労働者が長期間に渡って働いていたり、契約更新が形式的に繰り返されているとすると、正社員の場合と同様の扱いとなることがあります。その場合、「解雇権濫用法理」が適用され、雇止めが無効とされる可能性があります(労働契約法第16条)。なお、有期労働契約の締結に際し、その期間は一定のものを除き上限を3年と定めています(労働基準法第14条)。

従業員の妊娠・出産に対する社会保険手続

2011年10月13日 木曜日

 ①産前・産後休業の間の手続(社会保険手続:出産手当金)

 被保険者が出産日(出産日が出産予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は、98日)から出産日後56日までの間の労務に服さなかった期間は、1日につき標準報酬日額の3分の2に相当する額が、出産手当金として支給されます。ただし、休業期間中も給与を受けられる場合は、その額を控除した額が支給されます。


②出産時にも給付がある(社会保険手続:出産育児一時金、被扶養者(異動)届)

 被保険者や被扶養者が出産したときは、(家族)出産育児一時金として1児につき42万円が支給されます(協会けんぽの場合、産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合は39万円)。また、多胎児を出産した場合には、出産した胎児数分だけ支給されます。出産した子を被扶養者とする場合は、健康保険被扶養者(異動)届の手続きも必要です。

 その際に、出産費用の負担軽減を図るため出産育児一時金を直接医療機関等に支払う直接支払制度や、受取代理制度も用意されています。事前に当該医療機関等が制度に対応しているか確認してください。


③育児休業中の保険料免除(社会保険手続:育児休業取得者申出書)

 被保険者が3歳未満の子を養育するため、育児休業等を取得しているときは、会社からの申出により会社・被保険者の健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料が免除されます。免除期間は、育児休業等の開始日の属する月から、育児休業等の終了日の翌日の属する月の前月までです。育児休業等の期間によっては、申出が複数回必要なケースもありますので、注意してください。


④育児休業に関する給付金(社会保険手続:育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書・休業開始時賃金月額証明書)

 受給資格要件および支給要件を満たす雇用保険の一般被保険者が1歳または1歳2カ月(支給対象期間の延長に該当する場合は1歳6カ月)未満の子を養育するために育児休業を取得した場合に、休業開始時の給与の約50%の額を支給するものです。育児休業終了日を含む対象期間は日割り計算となります。


⑤職場復帰の手続(社会保険手続:育児休業等終了時報酬月額変更届

 育児休業等終了後勤務時間の短縮等により報酬が変動した場合、3歳未満の子を養育し、標準報酬月額に1等級以上の差が生じた被保険者からの申出により、標準報酬月額を改定することができます。標準報酬月額は、育児休業等終了日の翌日の属する月以後3カ月間に受けた報酬の合計を3で除した平均額で決定します。ただし、報酬の支払基礎日数が17日未満の月は、その月を除いて平均額を計算します。


⑥年金額計算時の標準報酬月額の特例(社会保険手続:厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書)

 3歳未満の子を養育期間中の被保険者の標準報酬月額が、勤務時間の短縮等により養育期間前を下回る場合には、被保険者からの申出により、「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」の提出により、養育期間前の(高い)標準報酬月額で老齢厚生年金等の年金額が計算されます。ただし、この特例は、厚生年金保険だけに適用するため、健康保険の傷病手当金等は、実際の(低い)標準報酬月額で計算されることになります。

事業場への入退場時間と労働時間

2011年8月28日 日曜日

 労働時間をどのように把握するのかは、法律上特段の定めはなく、会社が自由に決定することができます。


 労働基準法では、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平成13年4月6日基発第339号)において、使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法として、原則として、①使用者が自ら現認する、②タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認するという方法によらなければならない旨が定められています。労働基準監督署は、この通達を根拠としてタイムカード等の客観的な記録により、労働時間を把握するよう指導をしています。この中でも一般的に多くの企業が導入しているのは、タイムカードかと思います。タイムカードは、利用目的によってはその打刻時間をもって労働時間とは判断されていないケースがあります。


 厚生労働省は、「厚生労働省における職員の勤務時間管理については、国の機関として国家公務員法……、人事院規則等に基づき勤務時間報告書等を適切に管理することにより特段の支障なく行っているところであり、また、タイムカードのみでは職員の正確な勤務時間が把握できないことから、勤務時間管理の手法としてタイムカードの導入は必要でないと考える」(http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b158015.htm)と方針を示しています。要するに、タイムカードは庁舎管理の観点から用いており、職員の勤務時間管理の「目的」では用いないということです。


 また、裁判例の中には、「タイムカードを打刻すべき時刻に関して労使間で特段の取決めのない本件においては、タイムカードに記録された出社時刻から退社時刻までの時間をもって実労働時間と推定すべきである」(三晃印刷事件・東京地判平9.3.13)、「被告は当該タイムカードによっては従業員の労働時間の管理を厳密にはしておらず、むしろ、各従業員が記入した地域別収集状況に基本的によっており、従業員からの当該申告を見て疑問のあるところをタイムカードと照らして労働時間管理の正確性を期するために補助的に打刻を指示していたに過ぎず、厳密な打刻管理をしていたようには見受けられないこと、……原告がこのタイムカードをどのようなタイミングで打刻していたのかもあまり明確ではないことなどからすると、原告の請求期間の労働時間を正確に把握するものとしては不十分である」(藤ビルメンテナンス事件・東京地判平20.3.21)等と判示しているものがあり、いかなる目的でタイムカードを利用しているのかを明らかにしておくことは有用であると考えられます。


 つまり、タイムカードはビルや工場などの事業場の入退場を記録する目的で利用し、他方、労働時間管理簿などにより遅刻、欠勤、早退等を把握するような場合、タイムカードは入退場管理する等の目的で利用することを明示していたのであれば、タイムカードの打刻時間をもって直ちに労働時間とはなり難くなります。

「年金確保支援法」成立

2011年8月8日 月曜日

国民年金の未納保険料を遡って支払うことができる期間を、現行の過去2年間から10年間に延長する等を盛込んだ「年金確保支援法」が、4日に成立しました。


【「年金確保支援法」のポイント】


1.国民年金加入者の無年金防止・年金増額支援

・     国民年金保険料の納付可能期間を、現行の過去2年間から10年間に延長(3年の時限措置)

・     60歳~65歳の任意加入被保険者でも国民年金基金への加入が可能に

2.確定拠出年金の拡充

・     加入できる上限年齢を60歳から65歳に引き上げ

・     従業員個人の掛け金拠出が可能に

・     事業主の投資教育の継続実施を義務付け

3.財政悪化した厚生年金基金の支援

・     解散時の代行部分の返還に分割納付を認める


1.国民年金加入者の無年金防止・年金増額支援について…

 これにより「最大1600万人が年金受給額を増やせる」とのことですが、実際はどれだけの効果となるのかはわかりません。この法律は、平成24年10月1日までの間に施行、3年間に限って納付期間を延長します。

 また、かつて行われた3回の特例納付とは異なり、後払いする際の保険料額は、国債の利率などを勘案して加算されることになっています。

 

2.確定拠出年金の拡充について…

 現在は従業員が老後に備え自分で掛け金を増やしたいと思っても自分で拠出することは認められません。この法律の施行後は、従業員が上乗せして掛け金を出せるようになりますので、税制優遇を受けつつ老後資産を形成できるようになります。

 また、掛け金を積み増せる年齢上限も引き上げとなります。現在は加入者が60歳を超えると掛け金を出せませんでしたが、定年年齢の引上げ等に関連し、60歳を超えて働く人が増えている状況に対応すべく、企業が選択すれば65歳まで掛け金を積み増せるようにしました。

人事労務関連給付などの震災時の特例について

2011年5月2日 月曜日

*人事労務関連給付の各種補償制度について、今回の震災ではどのような特例ががあるかをまとめてみました。


①雇用保険(失業給付)

・事業所が被災して休業する場合には、労働者が実際には離職していなくても支給

・事業所が被災し休業、労働者が一時的に離職し、事業再開後に再雇用が予定されていても支給


②雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)

・被災地に事業所の場合、最近1カ月の生産量、売上高がその前1カ月などに比べ5%以上の減少があれば対象に


③労災保険

・仕事中、通勤中に地震や津波に遭遇して被災した場合は給付対象となることを明示


④未払い賃金の立替制度

・申請に必要な書類の簡略化、事務処理の迅速化を表明


*全国社会保険労務士会連合会は、上記の詳細や震災に関する労務問題の無料相談窓口を設置しています。


フリーダイヤル:0120-000-528

開設時間:午前10時~午後5時(月曜日~金曜日)




人事労務関連の「震災法務」

2011年3月31日 木曜日

安全配慮義務と休業手当

 

 震災時にも企業には従業員への安全配慮義務が発生します。今回の震災時に交通機関がストップした際にも従業員を帰宅させるべきか、社内に留まらせるべきかの判断に悩んだ事業主も多かったと思います。中には業務用の社有車を各方面に分散させて乗り合いで帰宅させたという企業の例も聞いております。

 

 また、ビル内にいた顧客ともども従業員全員に社内に宿泊することを勧めた企業もあったようです。今回のような未曾有の震災では結果路運となりますが後者の社内に留まって安全に経過を把握するという方が良かったように思います。前者の自動車で帰宅させた事業所の例では都心から東京郊外まで10時間以上かかり、結果的に朝方電車が動いてから帰宅した人と変わらない時間となっていたようです(JRなど翌日も動かない路線もあったので一概にはいえませんが…)。そのためにも社内に水や食料、洗面セットなど最低限の災害キットを備えておくと良いと思います。

 

 また、被災企業が従業員を休業させる場合は労移動基準法26条の支払義務は免除されますが、部品が足りないなどの使用者側の理由による場合は平均賃金の60%を休業手当として支払わなければなりません。ただ、今回の計画停電を理由とした休業に関しては、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業には該当しない」とする厚生労働省通達が出ています。

 

参考(基監発0315第1号):

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/other/dl/110316a.pdf

 

*通達のポイントは以下です。

 

1. 計画停電の時間に、事業場に電力が供給されないことを理由とする休業の場合

厚生労働省の通達では、「計画停電の時間に、事業場に電力が供給されないことを理由とする休業は、原則として労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業には該当しない」としています。つまり、会社としては休業手当を支払う義務はありません。

 

2. 計画停電の時間帯以外も含めた休業の場合

一方、計画停電の時間帯以外の時間帯の休業は、原則として「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当する』としています。本来、電力が供給されて事業遂行できるにもかかわらず、その時間帯を休業とする場合は、会社はその時間帯に関して休業手当を支払わなければなりません。

ただし、企業経営上、計画停電の時間帯以外も含めて休業させる必要がある場合もあるので、通達では、「他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときには、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しない」となっており、どういう場合に認められるかは、個別に労働基準監督署に照会することになります。

 

3. 計画停電により交通機関が使えないことによる遅刻・欠勤の場合

計画停電により労働者が遅刻・欠勤する場合は、使用者の責任ではないので休業手当の問題は生じません。遅刻・欠勤は労働者の労務提供の不完全履行または不履行となり、労働者は賃金を請求することはできません。

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