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人事労務関連の「震災法務」


安全配慮義務と休業手当

 

 震災時にも企業には従業員への安全配慮義務が発生します。今回の震災時に交通機関がストップした際にも従業員を帰宅させるべきか、社内に留まらせるべきかの判断に悩んだ事業主も多かったと思います。中には業務用の社有車を各方面に分散させて乗り合いで帰宅させたという企業の例も聞いております。

 

 また、ビル内にいた顧客ともども従業員全員に社内に宿泊することを勧めた企業もあったようです。今回のような未曾有の震災では結果路運となりますが後者の社内に留まって安全に経過を把握するという方が良かったように思います。前者の自動車で帰宅させた事業所の例では都心から東京郊外まで10時間以上かかり、結果的に朝方電車が動いてから帰宅した人と変わらない時間となっていたようです(JRなど翌日も動かない路線もあったので一概にはいえませんが…)。そのためにも社内に水や食料、洗面セットなど最低限の災害キットを備えておくと良いと思います。

 

 また、被災企業が従業員を休業させる場合は労移動基準法26条の支払義務は免除されますが、部品が足りないなどの使用者側の理由による場合は平均賃金の60%を休業手当として支払わなければなりません。ただ、今回の計画停電を理由とした休業に関しては、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業には該当しない」とする厚生労働省通達が出ています。

 

参考(基監発0315第1号):

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/other/dl/110316a.pdf

 

*通達のポイントは以下です。

 

1. 計画停電の時間に、事業場に電力が供給されないことを理由とする休業の場合

厚生労働省の通達では、「計画停電の時間に、事業場に電力が供給されないことを理由とする休業は、原則として労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業には該当しない」としています。つまり、会社としては休業手当を支払う義務はありません。

 

2. 計画停電の時間帯以外も含めた休業の場合

一方、計画停電の時間帯以外の時間帯の休業は、原則として「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当する』としています。本来、電力が供給されて事業遂行できるにもかかわらず、その時間帯を休業とする場合は、会社はその時間帯に関して休業手当を支払わなければなりません。

ただし、企業経営上、計画停電の時間帯以外も含めて休業させる必要がある場合もあるので、通達では、「他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときには、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しない」となっており、どういう場合に認められるかは、個別に労働基準監督署に照会することになります。

 

3. 計画停電により交通機関が使えないことによる遅刻・欠勤の場合

計画停電により労働者が遅刻・欠勤する場合は、使用者の責任ではないので休業手当の問題は生じません。遅刻・欠勤は労働者の労務提供の不完全履行または不履行となり、労働者は賃金を請求することはできません。



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